星の郷の城主、いや町長さん

 いにしえの、飛鳥の宮で活躍せり。その名を吉備の「星王子」。
岡山県は晴れの日が全国一多いという。そのためか、「星」にちなむ話しは多い。東京大学天体物理観測所として「竹林寺山」に天文台がおかれたのは、私が少年の頃。そして、倉敷天文台の本田実氏が彗星の発見家として世界に名を馳せたのも、その前後である。

 その岡山県の西の端に、星の郷、その名も「美星町」という「星」ではきわめつきの町がある。「夜空の星」(また裕次郎ですね。ごめんなさい)が見たいと、「光害防止条例」(夜、光を上に向かって放ってはならない)を、日本で最初に制定した町である。吉備高原の西端にほど近く、標高400メートルほどの高原の街。
 なんと、その町の町長さんが「杉原さん」なのであった。

 「星空を守ろうとかいう、大きな目標で、ひろくやっています。条例の後、町の天文台もつくって。内容は充実しているし、昨年は夜だけで5千人もきていただいて・・・。ただ、もうけにはなりませんのでねー。」

 美星天文台は、101cmカセグレン式反射望遠鏡をそなえ、毎週、金、土、日、月の4日間公開されている。はじめて望遠鏡にふれる人や家族づれからアマチュア天文家、そして高度な天体観測にも利用されている。

 「今年は3月にヘールボップ彗星が接近するそうですし。天文学ファンも増えましたねー。中世の吉備高原の様子を再現した、「中世夢が原」という歴史公園と天文台のコンビには期待しているんですよ。そうそう、青空市をはじめまして、これが大評判でね。倉敷からもよく来られていますよ。」自らお茶を入れてすすめていただき、恐縮する私を前に、お話はとどまる様子もない。

 で、やはり話題は先祖の話に。「私の先祖は、戦国に備中を制覇した「三村氏」とか、そのあと美星にいた「竹井氏」につながるらしいですが。遠藤周作先生の『反逆』という小説にそこらのことは詳しくかいてありますよ。ただ杉原とのつながりがもうちょっと詳しくわかるといいんですがね。私もリタイアしたら、いろいろ調べてみたいですなー」
 「家紋はかたばみ紋ですよ。2重の6角のなかに3つのかたばみがクローバーのように配置されている。美星にも杉原が数軒あるが、紋は同じではないですな。」

 『中世夢が原』も天文台も、この次はもっとゆっくり来ようと考えながら、後にした星の郷であった。('97,1)

PS: 杉原町長はこのあと、98、7の改選期に、引退されました。(98,7)

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