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日本で唯一人
江戸玩具職人・杉原茂夫さん

  玄関を入ると目の前の飾り棚にバーとひろがるのは、小さなお雛様や芝居小屋セットのミニチュア・・・などなど。思わず息を呑んで見つめてしまいました。「江戸玩具5代目 楽翁斎東山」という表札が傍らに見えます。
 ここは東京都大田区蒲田。現在日本で唯一人の『江戸玩具職人』という杉原茂夫さんのお宅です。
 「うちは江戸時代からの、3月5月のお節句屋さんです。雛人形とか、武者人形のお道具、刀とか槍とか楽器とか、そういうものを代々作ってきました。
 この方がそうなのか!!と、感心する私を前に、杉原茂夫さんは淡々と話し始めました。
 「8代将軍吉宗のころ、贅沢禁止令が出たんです。その頃に機能は同じなのに小さくミニチュアに作るということが始まったんです。これが江戸玩具の始まりです。」
 「私のところも戦前までは浅草の馬道というところに店を持っていましたが、戦災でやけましてここで作っています。」
 よくよく見るとたしかに小さいところまで良く出来ています。私などこんな小さい細工をするのかと考えるだけで気が狂いそうです。

松坂屋横浜店にて
 

 以前は浅草の江戸下町伝統工芸館などで講座も持っておられたという杉原茂夫さん、この日も百貨店に実演出演しておられ、これから出かけるということでしたので、くっついて行き取材させていただきました。
 横浜のJR関内駅の近く、伝統ある松坂屋百貨店で開かれていた、「江戸職人展」。そのほぼ中央に「江戸玩具『杉原』」という幟が立っています。お宅にあった以上に、様々な江戸ミニチュアセットが飾ってあります。ミニの御雛様セットなど、それぞれに値札が着いていますが、それほど高価ではありません。
 「もう、こういう百貨店出演を27年間もやっていますからね。北海道から神戸や福岡まであちこちに行きました。」
 楽しそうに笑って話されます。
 「でもね、最近はこういう職人さんが減ってきたのが心配ですね。」写真を撮らせていただいたあと、ぽつんと言われたのが印象的でした。

出身は山梨県の石和町
 

 これよりさき、お宅でのお話ではやはり先祖話が出ました。
 「私のところは、以前は山梨県の石和町から出てきたと言われているんです。次男は歴史が好きで、山梨へも行ってきたんですよ。」
 石和町といえば、杉原家が集中した土地の一つとして、私も電話で取材したことがあります。次男の方も加わって、これでも話しが盛り上がってしまいました。
 私が紹介した「江戸幕臣 杉原氏」という資料を見た次男の方「これは長篠の合戦で討ち死にしたことといい、私の祖父が話していたという内容といくつもあうところがありますね。」
 う~ん。室町幕府の奉公衆から、山梨に流れて武田家の家臣になったという杉原氏の末裔がこんなところでも見つかってしまいました。(2003,1)

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