元先生の、洋画家さん

 「いらっしゃい」。門のむこうに、やさしそうな顔がのぞいた。「こんにちは、はじめまして」。横のくぐりをあける人は、「えっ」・・。どこかでみかけたような。でも初対面のはずなのだが。
 これが、私が杉原清子さんを訪ねたときの第一の印象であった。

 杉原清子さんは、元小学校の先生をされた画家である。東光会という会に所属しておられ、洋画歴は「連続33年になるんですよ。」とおっしゃる。
 岡山市街地の西北の一角、ちょっと緑の残った地域であった。おとなりのご婦人が「ああ、このたんぼのむこうがそうですよ。」(実際には田ではなく、何か林のような一角であった)と教えてくれたくらいである。

 「私の家は、主人のおじいいさんが、香川県の木田郡小村というところから出てきたんです。なんでもむこうでは庄屋だったとか。祖父が遅い子だったので、最初は「青木」という家へ養子に出ていたんですが、もとの杉原が絶えてしまったのでこの岡山でまた「杉原」と名乗り直したと聞きました。」「おじいさんは幼い頃、”ふご”(はふご?)にいれられて、この岡山に出てきたそうです。」「私も若い頃は、田圃でい草刈もしましたけれど、教員をやめる気にならず、両方を続けけたんですよ。」あくまでも雄弁なご婦人である。インタビュー中の1時間半の間、特に口をはさむいとまもなかった。

 岡山県展賞5回連続入選。桃花賞1回。奨励賞7回。そして、画歴33年。
 娘さん2人は、ともに国立音大ピアノ科卒とかで、招きいれられたアトリエは、防音壁の部屋。そのアトリエの正面を飾る大作は「卓上の静物」として、長くわたしの「杉原美術館」の一角を飾るものとさせていただいたのである。

 あとで、「美術年鑑」をみると、「東光会、(号)67、000円」とあった。
 他の肩書きは「保護司」「青少年補導協議会会員」などだそうである。('97,1)
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