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理科教育に変革迫る京都パスカルの杉原さん

私が杉原姓のホームページ(以下HP)を始めてより少し後、杉原さんのつくった「杉原先生の理科室」というユニークなHPがあるのに気付きました。
小中学生向けの様々な理科実験を工夫し、HP上で公開しておられます。「京都パスカル」という自主的な理科教育研究団体の設立者の1人でもあります。京都へ出た機会にお勤め先の伏見区にある科学館にお訪ねしました。

インターネットは民主主義の新しい可能性
「勤務先は、京都市立の小学5・6年、中学1・2年の全生徒が年に1回来て、見学したり実験したりするというユニークな施設です。私の仕事はその学習の担当とともに、市民対象の科学事業や理科の先生方の研修も担当します。」
休日をつぶしてわざわざ出ていただいたという和男さんは、さすがに学校の先生らしく、笑顔で話しつづけられます。
「このHPを作る前にいろんなことがありましてねー。最初は勤務先のHPを作る担当になったんですけど、役所だけにいろいろと制約がありまして。いちおう公文書発行になるんですね。だからちょっとした更新をしたいと思っても変更に幾つもハンコがいる。当時はまだ個人のHPなんか思い付かなくて悩んでいたんです。」
「そのうち理科の先生のHPもぼちぼち現れ、個人のHPもできることを知ったのです。
これはいい。個人のHP上なら自由に理科教育情報を掲載できるし、これについては私だけが責任を取ればいいわけです。不完全であっても、ゆっくりと更新していける。しかも本の出版などと比べ大変に安価なメディアです。公に出せる情報と、個人責任の情報との役割分担があることに気付いたんです。」
「HPを開けるとたくさんの人からお便りや質問メールが来るようになって、どんどんと交流が広がっていきます。HPは個人一人一人が自由に情報発信し、ネット上で切磋琢磨される中でよりよいものを創造していく。また,地方の独自で個性的なものが全世界に向けて対等に発信できる。これこそ民主主義の発展ですよね。」
おやおや、話されることがいちいち私が日常的に考えていることと同じです。す、素晴らしい!!

レモン電池と豆電球
「教育界も教科書に書いてあることだけ教えなさいという時代がずっと続いたんですね。でも、文部科学省も”地域や生徒に合わせて独自の教育を考えなさい”というようになってきた。私はよかったと解釈しているんですけど。」
「理科でも歴史的にあたりまえとなっていることを教える。ところがそれが実はそうでなかったりするんです。」
「レモン電池で豆球を点灯させるというという実験があるんです。」
え、なんですって!先生のHPを真面目に読んでいない私は、面食らってしまいました。
「これは点灯しないというのが定説というか、実際点灯しないんですね。いくつ連ねても。だけど私、点灯させたんです。世界最小の豆電球を探してきたら点灯したんです。」(この項、★レモン電池で豆電球の点灯 参照)
う、うーん。すごい。何にでも疑問を持って、発想を転換するというか、そういうことが大切だという見本が目の前におられるのです。

「教育で生徒の個性を大切にするのなら学校の先生も個性的でないとだめです。そして、教育内容に対してもっと主体的にならないといけない。そういう意味で先生一人一人が目立つことも大切だと思ってやっているんですけどね。でも、HP作る先生が増えませんねー。特定の先生だけが目立つのはよくないし、インターネットの情報発信機能を有効に活用しているとはいえません。みんながHPを作り、さまざまな理科教育情報をアップし、それをリンクしあえば総合的に優れた情報網になり世界の理科教育が飛躍的に進歩すると思うんですけれどねえ。」

子供たちから質問の山
「こうしたHPを開設しますと、いろんなメールがきますね。塾のHPのリンク集などに、家での自主研究の為に私のHPがリンクしてある。そうすると夏休みの初めと終わりなどにはいっぱい質問メールがくるんですよ。毎日3時間くらいかけてたくさんの返事を書かなくてはいけない。大変だけど楽しいものです。」
「あるとき南米の日本人学校からメールがきたんですよ。」
「まず先生からよろしくとメールがきて、総合的学習の一環として子供たちから質問が来る。私はそれに必死で返事を返して。何でわたしがこんなボランティアをしなくちゃあいけないんだろう、なんて考えながら。」
「またシカゴや香港の日本人の主婦からは手作り石鹸の質問がきて、協力しました。そういうことからインターネットって本当に国際的なんだなーと実感できました。」

水の電気分解って、なぜか水酸化ナトリウム溶液の電気分解なんですよ。
「水の電気分解って、なぜか水酸化ナトリウム水溶液の電気分解をするんですよ。変でしょう? でも誰も疑問に思わなかった。それでこんな実験セットを開発したんです。そして、これを教員研修講座で各学校8個ずつ配ったんです。」
黄色い表紙の小冊子を手に杉原先生の講義が続きます。え、私はですって。もちろんなぜか興味津々、時間も忘れて聞き入った2時間ではありました。(この項、★水道水の電気分 解参照)
そうこうしているうちに「東レ理科教育賞」という理科教育界では権威ある賞を受賞されるようになるのだそうですが、京都パスカルの杉原先生。ますますのご活躍が期待されているようですね。

最後に故郷の話も
「私、岐阜県の大野町の出身なんです。古家が今もそこにありますし。」
”え!、私そこへ行きましたよ。”(岐阜県大野町参照
「あ、そうなんですか。年に何度か何度か帰って、柿の木の手入れをしたりしているんですよ。」
う~ん。世の中は狭いものですね。和男さんが大野町出身だったとは。そういえば大野町の杉原さんには、学校の先生が多かったという印象が残っているのですけれども。(2002,1)

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